2022年1月28日

技能実習制度で企業が守るべき技能実習生の待遇とは


技能実習制度で企業が守るべき技能実習生の待遇とは

技能実習とは、日本で培われた技術や知識、技能などを開発途上国へ移転することを目的とした就労ビザのことを指し、外国人が日本で就労することが認められています。

近年、技能実習生の受入が増加し、受入先企業と技能実習生の間でトラブルが問題になっています。
そのトラブルの原因には、受入先企業の法令違反によるものも見受けられます。

本記事では、技能実習における法令違反の状況や守るべき法令、違反事例を紹介しています。

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技能実習における法令違反の状況

引用:厚生労働省「技能実習生の実習実施者に対する監督指導、
送検等の状況(令和2年)
引用:厚生労働省「技能実習生の実習実施者に対する監督指導、
送検等の状況(令和2年)

2020年、労働基準監督機関によって実施された監督指導は8,124件です。
そのうち約70%にあたる5,752件で労働基準関係法令違反が認められました。

法令違反として認められた内容は、①安全基準②労働時間③割増賃金の支払い④賃金の支払い⑤就業規則の順に多く、技能実習生への待遇に対する法令違反が大半を占めています。

労働基準関係法令に違反した場合、場合によっては技能実習計画の認定が取消となり、5年間は技能実習生の受け入れができなくなります。
実際に法令違反が理由で、2020年は66件、2021年は157件の企業が技能実習計画の認定が取消となりました。

技能実習計画認定取り消しとなった場合、実習は強制終了となってしまいます。
そのため、技能実習生は帰国または、別の受入先企業での就職を探さなければいけません。

技能実習生が安心して実習生活を送るためには、受入先企業の法令遵守が必須なのです。

技能実習制度の遵守すべき待遇とは

受入先企業が適切な技能実習を実施するためには、受入先企業が技能実習制度を正しく理解する必要があります。

技能実習生が適切な実習生活を送れるよう、技能実習制度は技能実習法という法律によって守られており、日本人労働者と同様に労働基準関係法が適応になります。

以下は、技能実習法の中で定めている技能実習生の待遇について、紹介していきます。

技能実習生の待遇例

  • 時間外労働は原則月45時間以内
  • 時間外労働をする場合は、適性に割増賃金を支払うこと
  • 毎週 1日以上の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えること
  • 労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は60分の休憩を与えること
  • 有給休暇を認めること
  • 日本人同等以上の給与とすること
  • 適切な宿泊施設を確保すること
  • 食費・居住費・水道光熱費などは実費に相当する適正な額にすること
  • 技能実習生に支払われた額を確認することができる方法で支払うこと

時間外労働は原則月45時間以内

技能実習生は1日8時間、週40時間を超えて働いてはいけませんが、企業が36協定を結んでいる場合は、時間外労働が認められます。

時間外労働を行う場合、原則月45時間です。
時間外労働が45時間を超える月は年最大6回までとなっています。

ただし、技能実習制度はそもそも時間外労働を想定していません。技能実習計画を大幅に上回り時間外労働や休日と労働を強いることは法令違反となる可能性もあるため、時間外労働が必要最小限にとどめる必要があります。

時間外労働の場合は適正な割増賃金を払うこと

時間外労働をする際には、労働基準法に基づき、適正な割増賃金を支払う必要があります。

割増賃金に関して

・時間外労働は125%の割増賃金を支払うこと
・時間外労働が夜20時~翌朝5時の場合、150%の割増賃金を支払うこと
・夜勤(夜20時~翌朝5時の労働)の場合、25%の割増賃金をを支払うこと
・休日労働の場合、135%の割増賃金を支払うこと

例)時給1000円、就業時間が9時~17時の場合

17時~20時 ➡ 時給1,250円
20時~翌朝5時 ➡ 時給1,500円
休日出勤 ➡時給1,350円

適切な休日を与えること

受入先企業は、最低週1日以上または月4日以上の休日を与えなければいけません。

※週休2日の企業が一般的ですが、1日8時間*5日就労した場合に、規定労働時間の週40時間に達してしまうため、週2日を休日とする企業が多いようです。

適切な休憩時間を与えること

労働が6時間を超える場合45分、8時間を超える場合は60分の休憩を与えなければいけません。

有給休暇を認めること

受入先企業は、技能実習生に有給休暇を認め、申請があった場合に有給休暇を与えなければいけません。

6か月以上の継続勤務と全労働日の80%以上出勤率の場合、有給休暇が付与されます。

勤続年数0.5年1.5年2.5年3.5年4.5年
有給休暇日数1011121416

また、2019年4月に労働基準法が改正され、年間5日以上の取得が義務化されました。
単に有給休暇を与えるだけでなく、技能実習生が有給休暇を消化できる体制・環境も求められています。

日本人同等以上の給料を支払うこと

技能実習生の給料は最低賃金を満たし、職務内容や責任程度が同等の日本人就業員の給料と、同等以上の給料を支払わなければいけません。

最低賃金以下の給料で雇用契約を結んだ場合、その給料は無効となります。

また、外国人だからといった理由で不当に給料を低くしてはいけません。

適切な宿泊施設を確保すること

技能実習生が健康で快適な実習生活を送れるよう、企業は適切な宿泊施設を用意しなければいけません。

宿泊施設の条件

寝室は1人あたり4.5㎡以上を確保すること。※目安は6畳二人。
・消火設備を設置していること
・自然災害が発生しそうな地域、危険物を取り扱っている地域等は避けること
・睡眠時間が異なる2組以上の技能実習生がいる場合は、寝室を別にすること
 ※夜勤2名、日勤2名➡夜勤組2名が1室、日勤組2名が1室とする
・共有部分は、衛生管理を行い、感染症などの発生防止の対応を行うこと

これらの条件は、入国後講習の際の宿泊施設にも該当します。

食費・居住費・水道光熱費は実費相当とすること

食費・居住費・水道光熱費を技能実習生に請求する場合は、実費相当を請求するものとし、利益を得てはいけません。

例:家賃70,000円のアパートに4人で済む場合
負担額:70,000円÷4人=1人17,500円

※技能実習生の家賃の負担額は上限20,000円です。

また、これらの費用については、必ず技能実習生に説明し、同意をもらうようにしましょう。

支払われた額を確認できる方法で支払うこと

技能実習生への支払いをより確実で適正なものとするため、技能実習生へ実際に支払われた金額を確認できる方法で支払わないといけません。

技能実習の口座への振り込みにて、給料を支払う場合は、口座への振り込みを行う旨を説明し、同意を得ることが必要です。

法令違反が認められた事例

割増賃金の不当について

  • 概要
    繊維・衣服製造業の事業所において、技能実習生の時間外労働に対し、1時間500円しか払っていなかった。
  • 指導内容
    法定の25%以上で計算した割増賃金を支払わなければいけないことを勧告。
  • 結果
    支払うべき割増賃金を計算し、技能実習生6名に総額87万円が支払われた。

不適切な賃金控除等について

  • 概要
    農業を営む事業所において、技能実習生の一部の労働時間が計上されいなかった。また、実費以上に水道光熱費が控除されており、社会保険料も法廷以上に控除されていた。さらに、年次有給休暇管理簿が作成されていなかった。
  • 指導内容
    ①)労働時間に計上されていない分の賃金を支払うこと、および認められている以上のきんがくを控除してはいけないこと。

    ②年次有給休暇管理簿を作成し、有給休暇の取得日数を記録すること
  • 結果
    ①支払われていなかった給料が支払われ、賃金控除額も適正なものとなった。
    ②年次有給休暇管理簿が作成され、有給休暇取得日数が記録されるようになった。

違法な時間外労働、割増賃金の不当について

  • 概要
    ①縫製業の事業所において、時間外労働において、1時間400円の賃金のみ支払っていた。
    ②この事業者の36協定が使用者の意向に基づき、労働者代表が選出されており、違法な時間外労働を行わせていた。
  • 結果
    違法な時間外労働を行わせ、法廷の割増賃金を支払わなかった疑いで書類送検された。

引用:厚生労働省「技能実習生の労働条件の確保・改善のために

まとめ


技能実習生の多くは、日本で就業経験を生かしたステップアップを目指し、来日しています。
しかし、技能実習生を単なる「安価な労働力」と捉え、不当な扱いをする企業が後を絶ちません。

技能実習制度の本来の目的は、開発途上国に日本の技能や知識の移転を目指す「国際貢献」です。
彼らの覚悟や夢を裏切らないためにも、企業の技能実習制度への意識を変えていく必要があります。

まずは、企業が技能実習制度の正しい知識を持ち、理解することから始めましょう。
技能実習制度を正しく理解することが国際貢献の第一歩です。

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