技能実習生を受け入れる際に、企業がめざしたい「優良実習実施者」。
優良実習実施者に認定されると、技能実習生の在留期間や雇用人数が優遇されます。
本記事では、技能実習生を受け入れる企業がめざすべき「優良実習実施者」について、認定された場合のメリットや認定されるための条件について、詳しく解説していきたいと思います。
目次
1.技能実習の優良実習実施者とは
2.優良実習実施者のメリットとは
2-1.最長5年の技能実習が可能
2-2.雇用人数枠の拡大
3.優良実習実習者になるための条件
3-1.技能等の修得等に係る実績
3-2.技能実習を行わせる体制
3-3.技能実習生の待遇
3-4.法令違反・問題の発生状況
3-5.相談・支援体制
3-6.地域社会との共生
4.まとめ
技能実習の優良実習実施者とは
優良実習実施者制度は2017年の技能実習法の改正によりできた仕組みです。そもそも実習実施者とは受入企業のことを指します。そして、技能などの修得をさせる能力につき高い水準を満たす実習実施者のことを優良実習実施者といいます。
実習実施者、監理団体ともに優良*であると認定された場合、雇用人数や技能実習生の在留期間にてメリットを受けることができます。
※優良な監理団体のことを一般監理団体または一般監理事業といいます。
優良実習実施者のメリットとは
優良実習実施者に認定された場合、2つのメリットがあります。
①最長5年の技能実習が可能
1つ目のメリットは技能実習生の在留資格が最長5年まで認められることです。
技能実習の就労ビザには、技能実習1号、技能実習2号、技能実習3号の3つの種類があります。それぞれ在留期間は、技能実習1号が1年、技能実習2号が2年、技能実習3号が2年です。
しかし、優良実習実施者でない場合は、技能実習2号までしか在留期間の更新ができません。
一方、優良実習実施者になり、技能実習生が技能検定3級に合格している場合、技能実習3号へ更新が可能になります。つまり、最長5年間の技能実習が認められるのです。
企業にとっては、長期的な人材育成が可能になり、重要な戦力としての活躍も期待ができるようになります。
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②雇用人数枠の拡大
優良実習実施者の2つ目のメリットは雇用人数枠の拡大です。
通常の雇用人数枠
優良実習実施者ではない場合の通常の雇用人数は以下で、実習実施者(受入企業)の常勤職員数によって最大雇用人数が決められています。
実習実施者の常勤の職員総数 | 技能実習生の雇用人数 | |
第1号 (基本人数枠) |
第2号 (2年) |
|
301人以上 | 常勤職員数の1/20 | 基本人数枠の2倍 |
201人~300人 | 15人 | |
101人~200人 | 10人 | |
51人~100人 | 6人 | |
41人~50人 |
5人 |
|
31人~40人 | 4人 | |
30人以下 | 3人 |
従業員が100人の企業で技能実習生を受け入れる場合、技能実習1号の基本人数枠は6人です。そのため、1年に6人ずつ受け入れると、受入3年目には、技能実習1号が6人、技能実習2号が12人合計18人となります。
優良実習実施者(団体監理型)の雇用人数枠
一方、優良実習実施者に認定された場合、以下の通り最大雇用人数が拡大されます。
優良実習実施者 | ||
第1号 | 第2号 (2年) |
第3号 (2年) |
基本人数枠の2倍 | 基本人数枠の4倍 | 基本人数枠の6倍 |
従業員が100人の優良実習実施者で技能実習生を受け入れる場合は、技能実習1号の人数枠が基本人数枠の2倍である12人となります。そのため1年に12人ずつ技能実習生を受け入れると、3年目には、技能実習1号が12人、技能実習2号が24人合計36人となり、5年目には技能実習1号が12人、技能実習2号が24人、技能実習3号が24人の合計60人となります。
このように優良実習実施者になると、雇用人数枠が拡大され、多くの技能実習生を受け入れることができます。
優良実習実習者になるための条件
優良実習実施者になるためには、外国人技能実習機構に「優良要件適合申告書」を提出し、「優良実習実施者」の認定をしてもらう必要があります。
優良実習実施者の認定には、優良実習実施者の基準にクリアしなければいけません。
優良実習実施者の基準には大きく分けて6つのカテゴリがあります。
優良実習実施者の基準
- 技能等の修得等に係る実績(70点)
- 技能実習を行わせる体制(10点)
- 技能実習生の待遇(10点)
- 法令違反・問題の発生状況(5点)
- 相談・支援体制(45点)
- 地域社会との共生(10点)
優良実習実施者の基準は加点方式です。満点150点のうち6割以上とることができれば、優良実習実施者として認定してもらえます。
①技能等の修得等に係る実績
項目 | 配点 | |
最大70点 | ||
過去3年の基礎級程度の技能検定の 学科試験および実技試験の合格率 |
95%~ | 20点 |
80%~94% | 10点 | |
75%~79% | 0点 | |
~74% | -20点 | |
過去3年間の2・3級程度の技能検定の 実技試験の合格率 |
80%~ | 40点 |
70%~79% | 30点 | |
60%~69% | 20点 | |
50%~59% | 10点 | |
~49% | -40点 | |
直近過去3年間の2・3級程度の 技能検定等の合格実績 |
合格者2名~ | 5点 |
合格者1名 | 3点 | |
技能検定等の実施への協力 ※技能検定委員等を社員の中から輩出している場合や実技試験に必要な機材等の貸与等を行っている等 |
有 | 5点 |
②技能実習を行わせる体制
項目 | 配点 |
|
最大10点 |
||
直近3年以内の技能実習指導員の講習受講歴 | 全員有 | 5点 |
過去3年以内の生活指導員の講習受講歴 | 全員有 | 5点 |
③技能実習生の待遇
項目 | 配点 |
|
最大10点 |
||
技能実習1号の賃金(基本給)のうち |
115%~ | 5点 |
105%~114% | 3点 | |
技能実習生の賃金に係る技能実習の 各段階ごとの昇給率 |
5%~ | 5点 |
3%~4% | 3点 | |
技能実習生の住環境の向上に向けた取組 | 有 | 5点 |
※合計が10点を超える場合でも10点として計上されます。
④法令違反・問題の発生状況
項目 | 配点 |
|
最大5点 |
||
過去3年間以内に改善命令を 受けたことがあること |
改善未実施 | -50点 |
改善実施 | -30点 | |
過去3年以内における失踪がゼロ又は 失踪の割合が低いこと |
ゼロ | 5点 |
10%未満または1人以下 | 0点 | |
20%未満または2人以下 | -5点 | |
20%以上または3人以上 | -10点 | |
過去3年以内に責めによるべき失踪があること | 該当 | -50点 |
⑤相談・支援体制
項目 | 配点 |
|
最大45点 |
||
母国語相談・支援の実施方法・手順を定めたマニュアル等を策定し、関係職員に周知していること | 有 | 5点 |
受け入れた技能実習生について、全ての母国語で相談ができる相談員を確保していること | 有 | 5点 |
過去3年以内に技能実習の継続が困難となった技能実習生に引き続き技能実習を行う機会を与えるために該当技能実習生を受け入れを行ったこと | 基本人数枠以上の受入 | 25点 |
基本人数枠未満の受入 | 15点 | |
技能実習の継続が困難となった技能実習生に引き続き、技能実習を行う機会を与えるため、実習先変更支援サイトに管理団体を通じて受入可能人数の登録を行っていること | 有 | 10点 |
⑥地域社会との共生
項目 | 配点 |
|
最大10点 |
||
受け入れた技能実習生に対し、 |
有 | 4点 |
地域社会との交流を行う機会を アレンジしていること |
有 | 3点 |
日本の文化を学ぶ機会を アレンジしていること |
有 | 3点 |
参考:法務省「外国人技能実習制度について」
まとめ
技能実習生を受け入れる企業がめざすべき「優良実習実施者」。
優良実習実施者になるためには、技能検定の合格状況や失踪状況、サポート体制などが審査されます。
つまり、技能実習生にとって実習しやすい環境を整えている必要があるのです。
優良実習実施者に認定され、技能実習生が技能実習3号まで修了、さらに特定技能へ移行した場合、最長10年間の就労が認められ、長期的戦力、グローバル人材としての活躍が期待できます。
受入企業と技能実習生双方が実りのある実習生活を送るためにも、受入企業は優良実習実施者を目指し、技能実習生にとって働きやすい環境を整えていきましょう。
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