2021年11月19日

農業の人材不足を解決する特定技能制度!農業分野における制度の内容や受入条件など詳しく紹介!


農業の人材不足を解決する特定技能制度!農業分野における制度の内容や受入条件など詳しく紹介!

「人手が足りない。」「体力的にきつい。」
農業従事者は少子高齢化と農業に対するネガティブなイメージによって、慢性的な人材不足に悩まされており、いかに若い世代の人材を確保するかが大きな課題となっています。

本記事でご紹介する内容は、農業従事者の課題である人材不足を解決してくれる「特定技能」についてです。
特定技能の制度内容や技能実習制度との違いについて紹介しています。
人材不足に悩まされている農家、農業分野の企業の方は必見です!

農業での深刻な人材不足

引用:農林水産省「農業労働力に関する統計」

私たちの生活の中で必要不可欠な「食」ですが、現在深刻な問題に直面しています。
それは、農業従事者の高齢化です。

農業従事者の平均年齢は約67歳といわれており、「体力的に農業を続けるのが難しい」という理由で農業から離脱する人が増えています。

農林水産省の統計によると、毎年約5万人規模で農業従事者の数は減っており、約5年間で約30万人もの農業従事者が農業から離脱していきました。

また、農業には労働基準法の労働時間・休憩・休日に関する規定は適用除外になっております。ホワイトな労働環境を求める若い人材を確保することはより難しくなっています。

特定技能制度とは

そこで、日本政府は2019年から「特定技能」という新たな在留資格を発行し、
人材が不足している分野で、外国人を労働者として受け入れる制度を新設しました。

特定技能制度は、特に人材が不足しているとされている14業種で外国人の受入が可能で、農業もその1業種になります。
特定技能制度を利用して、ベトナムや中国、ミャンマー、インドネシアなど様々な国から人材を受け入れています。

現在、農業分野で特定技能の在留資格を取得している外国人は、約4,000人です。(2021年6月時点)
この数は特定技能の受入が可能な14業種の中で2番目に多く、今後も受入数が増加していくことが見込まれます。

引用:出入国在留管理庁「特定技能1号在留外国人数」
引用: 出入国在留管理庁「特定技能1号在留外国人数」

特定技能と技能実習の違い

現在、農業分野における外国人人材の受入制度は特定技能制度と技能実習制度の2つがあります。

  • 特定技能
  • 技能実習

どちらも海外からの人材を受入れる制度ですが、制度内容は異なります。
特定技能制度と技能実習制度は何が違うのか、また特定技能で外国人を受け入れるメリットは何か見ていきましょう。

  特定技能制度 技能実習制度
在留資格 特定技能1号 技能実習
在留期間 通算5年 最長5年
従事可能な業務範囲

・耕種農業全般
・畜産農業全般
※日本人が通常業務している関連業務に付随的に従事することも可能

・耕種農業のうち、「施設園芸」「畑作・野菜」「果樹」
・畜産農業のうち、「養豚」「養鶏」「酪農」
※農畜産物を使用した製造・加工作業の実習も可能
技能水準

「受入れ分野で相当程度の知識又は経験を必要とする技能」
➡農業技能測定試験の合格者
※技能実習(3年)を修了した者は試験が免除

日本語能力水準

「ある程度日常会話ができ、生活に支障がないか程度の能力を有すことを基本」
➡日本語能力試験N4以上または、国際交流基金日本語基礎テストA2以上合格者
※技能実習(3年)を修了した者は試験免除

雇用主
(外国人人材の受入主)

・農業実施者
・派遣事業者

・農業実施者(JAは可)

特定技能と技能実習の違いは以下の3つがあります。

特定技能と技能実習の違い

  • 在留期間
  • 従事可能な業務内容
  • 技能水準/日本語水準

①在留期間の違い

特定技能の在留期間は通算5年、技能実習の在留期間は最長5年です。

特定技能の場合は、帰国している期間は在留期間に含まれません。
つまり、農業の繁忙期のみ従事した場合に長期就労が可能になります。


繁忙期に来日、閑散期は自国へ帰国。
再度繁忙期に来日するといった形態をとることが可能です。
繁忙期、閑散期をそれぞれ半年間ずつとした場合、最長10年間従事することも可能です。

一方、技能実習は帰国している間も在留期間に含まれるため、最長で5年までしか従事することができません。

在留期間について

②従事可能な業務範囲の違い

特定技能は「耕種農業」「畜産農業」の業務全般に従事することができます。
また、日本人が従事している関連業務にも従事することができるため、幅広い業務を行うことが可能です。

技能実習は、「耕種農業」のうち、「施設園芸」「畑作・野菜」「果樹」、「畜産農業」のうち、「養豚」「養鶏」「酪農」の業務に従事することが可能です。

ただ、それぞれの職種に必須業務や関連業務、周辺業務といった業務内容が細かく定義されており、技能実習計画書通りに実施をしないといけません。
管理に手間が発生してしまったり、簡単な作業でも技能実施計画書以外の作業は従事することができないといった制約があります。

技能実習の作業定義は「認可法人 外国人技能実習機構」のサイトを参照ください。

③技能水準/日本語能力水準の違い

特定技能は、もともと一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みです。
外国人が農業分野で働くためには、政府が定める農業に関する知識や技能の要件を満たす必要があります。

その要件を満たす方法は2つあります。

1つは、「農業技能測定試験」および「日本語能力試験」または「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格することです。

農業技能測定試験は「耕種農業」と「畜産農業」の2つの試験があり、従事する業種によって受検する試験が異なります。
この2種類の試験には農業支援活動を行うために必要な日本語能力を問う試験も含まれています。

これらの試験の詳細はこちら↓↓

要件を満たすもう1つの方法は技能実習3号を修了することです。
技能実習を修了した= 一定の専門性・技能を有し即戦力とみなし、上記試験の受験なしで、特定技能への移行が可能です。

技能実習は、上記のような知識や技能を求める本人要件がありません。
来日前に、送り出し機関にて日本語の勉強をしますが、必要最低限な日本語レベルの勉強になります。

このように、特定技能は技能実習と比べて、従事する業種についての知見や技能、日本語能力が高く、即戦力として活躍することが期待できます。

農業分野での受入要件

農業分野で、外国人人材を受け入れる際には、受入れ側にもいくつかの要件があり、要件を満たした場合に受入れが可能になります。

農業分野での受入要件

  • 適切な雇用契約を結ぶこと
  • 受け入れ機関自体が適切であること
  • 外国人を支援する体制があること
  • 「農業特定技能協議会」に参加し、必要な協力を行うこと

①適切な雇用契約を結ぶこと

外国人に気持ちよく農業に従事してもらうために、受入機関は適切な雇用契約を結ぶ必要があります。
また、特定技能で外国人を雇用する際には、特定技能制度に定めれられた条件がいくつかあります。

  • 給与は日本人従業員と同等以上
    ➡最低賃金であればよいということではなく、日本人が従事する際の給与が最低賃金より高い場合は、その給与と同等以上にしないといけません。
  • 労働時間・休日・給与は日本人従業員と同等に設けること
    通常、農業は労働基準法のうち、労働時間・休日・休憩時間については適用除外のため、特定技能でも原則適用除外になります。しかし、日本人従事者と同様に適切な労働時間・休日・休憩を設ける必要があります。
  • 有給休暇を認めること
    外国人が一時帰国を求めた場合に、有給休暇を認め取得させる必要があります。  

など

雇用契約で雇用条件を定めたものの、「給与が払われなかった」、「長時間労働をしいられた」など、外国人と受入機関の間で発生したトラブルが問題になっています。
当たり前ですが、受入機関側は雇用契約で結んだ内容を厳守してください。

②受入機関自体が適切であること

受入機関自体が外国人を受入れる上で、相応しいかどうかも必要な条件になります。

上記で述べたように、過去に給与や労働問題でトラブルが発生していた場合、受入機関として適切ではないと判断され、受入れができない場合もあります。

以下は受入機関に求められる条件の例です。
受入機関として適切かどうか確認するようにしましょう。

・労働、社会保険および租税い関する法律を遵守していること
・特定技能雇用契約を結んだ日から1年以内に、同じ仕事に従事していた労働者を解雇していないこと
・特定技能雇用契約を結んだ日から1年以内に、外国人の行方不明者を発生させていないこと
・過去5年以内に、技能実習法に基づき実習認定を取り消されていないこと
・過去5年以内に、出入国管理関係法令や労働関係法令に違反する脅迫・暴行・脅し、外国人のパスポートを取り上げる、給与の不払い等を行っていないこと

③外国人を支援する体制があること

受入機関は、外国人人材が安定的かつ円滑に業務を遂行できるよう、職業生活上・日常生活上の支援を行わないといけません。

これらの支援の中には、政府が定めている義務的支援と任意的支援があり、義務的支援については必ず支援を実施しなければいけません。

そのため、受け入れ機関はこれらの支援を登録支援機関に一部またはすべてを委託することが一般的です。

*義務的支援10項目
・事前ガイダンス
・出入国する際の送迎
・住居確保・生活に必要な契約支援
・生活オリエンテーション
・公的手続き等への同行
・日本語学習の機会の提供
・相談・苦情への対応
・日本人との交流促進
・転職支援
・定期的な面談・行政機関への通報

④「農業特定技能協議会」に参加し、必要な協力を行うこと

特定技能制度の適切な運用を図るため、受入機関は「農業特定技能技能協議会」の構成員になる必要があります。

協議会では、構成員の連携の緊密化を図り、各地域の事業者が必要な特定技能外国人が受け入れられるよう、制度や情報の周知、法令遵守の啓発、地域ごとの人手不足の状況を把握して、必要な対応などを実施しています。

協議会の構成員になるためには、農林水産省のサイトより申請が可能です。
申請方法の詳細等も案内されていますので、農林水産省のサイトをご確認ください。

農林水産省のサイトはこちら↓↓

特定技能の雇用形態について

これまで特定技能と技能実習の違いについて、ご紹介してきましたが、
農業分野で特定技能外国人を受け入れるにあたり、他分野と異なる点があります。
それは雇用契約の形態です。

特定技能外国人を農業分野で受け入れる場合、農業従事者が外国人を雇用する直接雇用と、派遣事業主が外国人を雇用し、労働者派遣契約を結んでいる 農業従事者 に外国人を派遣する派遣形態の2つの雇用形態があります。

雇用関係図

直接雇用のしくみは他の分野とおなじです。
農業従事者 が受入機関となり、特定技能外国人を受け入れます。その際はと特定 農業従事者 技能外国人が雇用関係にあり、雇用契約を結びます。

一方、派遣形態は農業分野と漁業分野のみ認められた形態で、派遣事業主が受入機関となり、外国人を受け入れます。雇用関係は、直接雇用と同じく受入機関と外国人が雇用契約を結びますが、外国人は派遣事業主と労働者派遣契約を結んでいる 農業従事者 のもとへ派遣され、その 農業従事者 のもとで農作業を行います。農作業の指揮命令は派遣先の農業者が行います。

また、JA等が外国人を雇用し、組合員などの 農業従事者 から農作業等の業務を請け負い、外国人にその業務を行ってもうら働き方も可能です。しかし、作業の指揮命令は雇用契約を結んだJA側が行う点に注意する必要があります。

参照:農林水産省「農業分野における新たな外国人材の受入れについて」
農林水産省「特定技能外国人の受入れが始まりました!」
   農林水産省「農業労働力に関する統計」

まとめ

以上、農業における特定技能制度の紹介でした。

農業分野では今後さらに特定技能外国人の受入が増加していくことが期待できます。
しかし、外国人とのトラブルも問題になっていることも事実です。

両者が気持ちよく働いていくためには、受入機関がきちんと制度の趣旨や内容を理解することが必要です。

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