近年、技能実習生や「特定技能」で働く外国人が妊娠をきっかけに、不正解雇されたというケースが増加しています。このような妊娠を理由とした外国人の不正解雇は各地で問題視されており、就労環境の整備が必要となっています。
2025年1月26日、政府が「特定技能」で働く外国人が妊娠・出産した場合、その期間を最長5年の在留期間から除外する措置を検討していることが分かりました。技能実習には、同様の制度が既にあり、技能実習と足並みをそろえる形となります。
本記事では、「特定技能ビザ」で採用した外国人従業員が妊娠した際の受け入れ企業の対応内容や支援制度についてご紹介していきます。
「妊娠・出産」を理由にした不法な扱いは違法
日本では、「男女雇用機会均等法」や「男女雇用機会均等法」「男女雇用機会均等法」や「育児・介護休業法」により、「妊娠・出産」を理由に解雇や不当な扱いをすることは禁じられています。これは、外国人従業員に対しても同様です。まずは、妊娠や出産を理由に不当な扱いをすることは絶対にやめましょう。
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)
第9条 3項
事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法 (昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項 の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項 の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)
第10条 事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
※介護休業、子の看護休暇、介護休暇、子供を養育する労働者の所定外労働の制限・時間外労働の制限・深夜業の制限・所定労働時間の短縮措置等、要介護家族を介護する労働者の時間外労働の制限・深夜業の制限、所定労働時間の短縮措置等についても同様にこれらを理由とする不利益取扱いが禁止されている。
受入れ企業側が対応すること
外国人従業員から妊娠が伝えられた際には、本人とよく話し合い、本人の希望も踏まえて適切な措置が必要になります。妊娠に戸惑い、就労を続けられるかの大きな不安を抱えている場合があるため、退職する必要がないことはもちろん、業務内容の相談や産休・育休の支援制度があること等を説明する必要があります。
妊娠中・出産後に配慮が必要なこと
1.業務に対する配慮
受け入れ企業は、妊娠中や出産後の特定技能外国人に重量物を取り扱う業務や有害ガスを発散する場所などに就かせることはできません。また、本人から請求があれば、時間外労働や休日労働・深夜労働をさせることはできません。本人の希望に合わせ、必要があれば業務調整を行いましょう。
2.健康状態に対する配慮
受入れ企業は、外国人従業員が医師等から保健指導や健康診査を受けるために必要な時間を確保しなければいけません。また、外国人従業員が医師等から妊娠中に通勤緩和や休憩の取得等に関する指導を、妊娠中や出産後に作業制限や勤務時間の短縮、休業等の指導を受けた場合はこれらの措置を講じる必要があります。
3.産休・育休に対する配慮
外国人従業員が妊娠した場合、社会保険に加入しているため、日本人と同様に産前産後休業・育児休業の取得が可能です。産前産後休業は、出産予定日を含む6週間(42日)前(双子以上は14週間前)から取得可能です。また、産後6週間は、本人の請求の有無にかかわらず、業務運営に差し支える場合であっても、休ませなければいけません。一方、育児休業は、子供が1歳になるまで取得することが可能です。保育所に入れないなどの事情がある場合は、事前申請により最大2歳になるまで取得が可能です。本人に産前産後休業、育児休業の希望があるかどうかを確認する必要があります。
4.在留資格に対する配慮
現在、特定技能制度では育休・産休中の期間を在留期間から除外することはできず、育休・産休期間も在留期間としてカウントされます。特定技能外国人にこの旨をきちんと伝え、理解した上で出産に臨むようにしましょう。
なお、技能実習では、「在留期間更新許可申請」をすることで出産・育休期間を在留期間から除外することが可能です。
まとめ
外国人従業員の妊娠や出産に関連するトラブルが増加していますが、事前に妊娠・出産・育児に関する制度をきちんと理解することで、トラブルを防ぐことができます。
受入れ企業は外国人従業員からの妊娠の報告にも慌てずに、制度や支援内容、今後の働き方についてじっくり相談するようにし、出産後も安心して働ける環境を提供するようにしましょう。
参考:
出入国在留管理庁「技能実習生が妊娠等した場合の基本フロー」
https://www.moj.go.jp/isa/content/001393587.pdf
厚生労働省「妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いに関する解釈通達について」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000089158.pdf